2011年10月05日

「福翁自伝」

岩波文庫 青102-2
福沢諭吉 著、富田正文 校訂
新訂 福翁自伝
(1978年10月16日 第1刷、2009年10月5日 第59刷発行)


福沢諭吉の自伝。
口述したのを速記者が記録したのが土台ということで、口語体で読みやすい。

福沢諭吉というと大分の中津というイメージがあったのだが、生まれは大阪だし、中津で育ちはしたものの好きではなかったようだ。

▼(P32)
田舎の中津の窮屈なのが忌(いや)で忌で堪らぬから(中略)
外に出ることが出来さえすれば難有(ありがた)い(中略)
故郷を去るに少しも未練はない、如斯(こんな)所に誰が居るものか



とか、随所に出てくる。
中津がちょっとかわいそうになった ^^;
中津市のサイトを見ると一番上に福沢の顔が載ってるが…

で、中津から長崎、大阪、江戸と来て、洋行したり慶應義塾を開いたり、というお話。

まあさすがにその肖像が最高額紙幣に載る人物、ではあるのだが、意外と俗な部分もあったりして、そう思って改めて肖像を見るとどこかひょうきんにも見えたり。

彼が名を遺したのは、元々デキが良かった上に、家風も良く、人とのめぐり合わせにも恵まれ、そして維新前後という時代だったのも大きな理由だろう。
暗殺されなかったことも幸運によるものだったようだ。
資質・環境・時代・運、そしてもちろん本人の努力。
それらが揃えば、そりゃ一万円札にも載るのも当然、か?
金銭に頓着しなかったという本人が今の万札を見たら何と言うだろうかね ^^


さて、漢字に着目してみると、漢検1級配当なのか見たこと無いような字も出てくるし、準1級配当なんかはザラだが、もちろん振り仮名がふってあるので読むのにさほどの支障は無い。

準1級でお馴染みの「乃公」。
自分の知る限りでは、漢検では音読みの「ダイコウ」としてのみ出題されるようだが、「福翁自伝」では「おれ」と振り仮名つきで頻繁に出てくる。
国語辞書の「おれ」を見ると「乃公」も載っているし、もし訓読み問題で出たら「おれ」で正解、かも。

一方で、漢検では不正解になりそうな表記も多い。
それはまあ福沢にも「福翁自伝」にも限った話でもないだろうが、適当に拾うと…
 心地 = こころもち
 喫煙客 = たばこのみ
 口実 = いいぐさ
こういうのがまた楽しい。
ま、漢検なんてのも福沢が見れば笑い飛ばすだろうな、と思いつつ。

そうそう、「鹿爪らしい」も何箇所か出てきた。


とにかく。
話の内容はもちろん、漢字的にも興味深いし、何より時代が時代だからその点の面白さもある。
維新前後に興味のあるかたには特におすすめしたい。

posted by 並句郎 at 20:39|   図書館本各記事 | 更新情報をチェックする